仕事上のコミュニケーションで重要な情報の共有ですが、信頼関係を構築する上で必要な情報とは具体的にどのようなものでしょうか。
それが「仕事のほうれんそう」である「報告」「連絡」「相談」です。報連相は部下から上司に対して行われるものだと捉えられているようですが、本来は互いの信頼関係構築のためのものであり、例えばお客様に対しても信頼関係を構築しようとするなら必要になってくるものです。
「報告」と聞くと仕事の進捗状況などを定期的に上司に伝えるもので義務的なものに感じるかもしれませんが、本来は「知っておくべき情報を必要としている相手に個人的な感想などを交えず正確かつ適時伝えること」です。ここで重要なのは個人的な感想などを交えずに伝えること適時に伝えることです。
例えば入荷待ちの商品を求めたお客様に対して、連絡先を確認して入荷の目処が立った時点で伝えてあげるというのも報告になります。一見「連絡」のように思われるかもしれませんが、ポイントは購入の意思が有る方に対して入荷の目処が立った時点で伝えたことで、これが尋ねた人に対して入荷したらホームページ上でお伝えしますということなら連絡になります。
つまり報告と連絡の違いは伝える相手にとっての緊急度(必要度)の違いで、相手が強く求める情報に対しては報告の形で伝えないといけないということです。
では、「相談」はどのような場合に行うものなのでしょうか。
実は「相談」というのは伝えるべきものというよりも、コミュニケーションを深めるためのものであり、相手に対して胸襟を開く、心を開くことで相手に安心感を持たせるためのものなのです。報告や連絡は伝えるべき情報の共有ですが、相談はそもそも伝えるべきものでも情報でもありません。ほとんどの人が内容によって相談する相手は決めていると思いますが、それは「親身になって聴いてくれるかどうか」によって決めていないでしょうか。つまり相談とは対等の立場になって、思いや感情を共有してもらうためのもので、たとえそれによって答えが出なくても支障がないものなのです。
それを報告、連絡と並べて仕事上で重視するのは、「相談される」という行為がコミュニケーションにおいてとても重要な意味を持っているからです。
冒頭で報連相は部下から上司への義務のようなものと捉えられていると言いましたが、そのように部下に報連相を義務付ける上司は、よっぽど部下から積極的に相談されているかを気にすべきでしょう。
先述の通り、相談とはその人にとって心理的ハードルが高い行為ですから、頻繁に行われるものではありません。ましてや、信頼関係が希薄な相手に相談することはありません。事実や経緯などの報告や連絡はできても、悩みや問題解決のための相談は恥ずかしさや苦しさといった感情が先に働くためです。つまり報連相のうちの相談だけは、相談してもらいたい相手に先に自ら行うべきものなのです。
部下に報連相を身につけさせたいと思うのであれば、まず上司自らが部下に対して心を開いて相談することです。相談された部下は上司のことが少しでもわかり、安心感が生まれ相談しやすい環境が整っていきます。
お客様に対してもこちらから相談を持ちかけ、お客様との間に共感を生み出すことができれば信頼関係が構築できます。
ここで注意しないといけないのは、相談とは明らかな結果や答えを求めるためのものではなく、また一方的に自分のことをひけらかすものではないということです。
上司から部下へ単なる自慢話や過去の経験談を話すことは相談ではないだけでなく、うんざりされるだけで信頼とは真逆の行為になってしまいます。
また、お客様に対しても選択されたが在庫が無いAという商品の代わりに、売りたいBという商品にしてもらえるなら今だけ値引きします、などというのは相談ではなく単なる売り込みになってしまい、離れられることになりかねません。
お客様への相談はあくまでお客様のために行うこと、例えば会社のシステム改善のためのアンケート協力、それも突っ込んだ意見を求めたりすることでお客様の本音が引き出せれば、より高い信頼関係の構築が期待できます。嫌なことを言われるかもしれないからということでアンケートなどを敬遠する会社もありますが、そういった意見ほど自らを変えるきっかけになり、変えることができれば相手からの信頼はより確かなものとなります。
ずいぶん古い例えですが「ポパイにほうれん草」という、日本でいう「鬼に金棒」のような言葉がありました。アニメキャラのポパイが好物で栄養価の高いほうれん草を食べると、自分より大きなブルータスという大男をやっつけるというもの。
コミュニケーションの報連相も身につけると、どんな相手に対しても信頼関係を構築し、より良い成果を得ることができるようになります。自分のためよりも、相手のためと考えて取り組むのが一番大切です。