第2回「求められる「大きな仕事」とは」

コロナ禍が私たちのくらしに多大な影響を与え、それによってこれまでの仕事の価値、引いては事業や会社そのものの存在価値まで考えさせられるようになりました。その中でも価値の高い、「無くてはならない」という仕事に従事している人が「エッセンシャルワーカー」として注目され、それらの仕事の特徴が「高い社会性」にあるということをお伝えしました。

次に注目したいのが、その高い社会性のある事業や仕事に従事している「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちです。もっと厳密に言えば、事業と働く人の関係です。

当然ですが、働く人がいないと事業は成り立ちません。逆も然りで、事業に社会性を持たせることができるのは従事する人次第です。コロナ禍で私達の暮らしを支えてくれたのは医療従事者や物流サービス事業の方々ですが、重要なのはその仕事をしようとする働く人の「意志」です。

そういった欠かせない事業であっても、コロナ感染の危険を覚悟の上で働いてくれた方々がいたからこそ事業が機能していました。その原動力、つまり事業の原動力とはそういった現場で働く人たちの強い意志なのです。

これはコロナ禍における医療や物流サービスといった社会性の高い事業に限ったことではありません。同じ事業であっても、会社によって、そこで働く人によって社会性、つまり社会への貢献度や価値は変わってきます。これからの仕事や事業に求められる「高い社会性」とは、個々の会社とそこで働く人の意志によって決まるものなのです。

次に重要なのは、会社の中で誰か一人だけが志高く働いていれば、その会社や事業の社会性や価値が向上するわけではないということです。例えば、当然ですが会社の社長、つまりその事業の経営者は「社会に貢献する」という志を持って会社を運営しています。しかし、社会性とは人や社会生活との親密度ですから、社長一人が志高く働いているとしても一人だけなら本末転倒ということです。つまり、会社や事業に高い社会性を持たせるためには、そこで働く人の意志を会社や事業全体で共有し高めていくことが必要です。

例えばエッセンシャルワーカーの代表的存在である医療従事者は、「一人でも多くの患者さんを助ける」という使命を持って働き、それは働く病院の大小や病院ごとの区別は関係ありません。彼らはその使命の下にそれぞれの現場でそれぞれの役目を果たすために働いています。

ここで注目すべきは、それぞれが別個に仕事をするのではなく、一人の患者さんごとに必要な処置を施すために患者さんの情報を共有し、一人でも多くの患者さんを診るために一人が複数の患者さんを担当していることです。病院だから当然だと思うかもしれませんが、仕事の現場として考えるとそれぞれのコミュニケーション能力が非常に高いということがわかります。人の命を預かる仕事ですから情報の共有は不可欠で、かつその優先順位の選別も現場の状況に応じて柔軟に行われ、それが常に共有されているからこそ成立しています。

これからますます会社の存在意義や働き方、仕事の「やりがい」といった社会性が問われるようになっていく中で、重要かつ一人ひとりが意識して取り組めるのがコミュニケーションです。自分の仕事や会社を社会性の高い「社会に必要とされる」ものにしていくには、一人ひとりがコミュニケーションを変えていくことです。自分の周りの人へのコミュニケーションはもちろんですが、これからの会社や仕事にとって必要だと思われる人や会社に対して積極的にコミュニケーションを取っていくことが大切です。この意志のある意識的なコミュニケーションこそがこれから求められる「社会性の高い」大きな仕事の第一歩だと言えるのです。

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