第4回「コストの種類とコスパ」

経営においても自分の人生においてもマネジメント、つまり管理しコントロールしなければならないのはズバリ「お金」です。

このように聞くとお金が全てだと思われるかもしれませんが、お金が全て、つまりお金さえあれば何でもできるという考えは裏を返せばお金に支配されコントロールされているようなもので、まさしく本末転倒した考えです。
お金をコントロールして事業を成功させたり、個人の夢を実現したいのであれば、お金を持つことよりもお金のことをよく知らなければなりません。

まず、お金には大きく分けて2つの側面があること。
一つは入ってくるお金であり、もう一つは出ていくお金です。ここで気をつけないといけないのが、この入ってくるお金と出ていくお金は同じだということです。
だから2つの側面があるということですが、つまり出ていくお金はあなたの懐に入ったお金だということです。当たり前だと思われるかもしれませんが、実はこのことに気づけていない人ほど、気がついたらお金が無くなって困っているという人かもしれません。つまり入っていく先と出ていく元は同じであり、お金が有る無いはお金を手にして使う人や会社に依るということです。

社会制度の歪みなどによる経済格差は確かに存在しますが、近年ネット上で話題になる「ガチャ」などという機会の不平等を嘆くのは凡そこのお金の2つの側面を理解せず、お金が全てになってしまっているかもしれず、今一度考えるべきことです。なぜなら、無一文から事業を立ち上げ成功した人もいれば、事業に失敗して借金だけが残ったという人が再び成功するという話は探せばいくらでも出てきます。
経営の神様と言われた松下幸之助さんは小学校を出るとすぐに自転車屋さんに丁稚奉公に行き、そこから一代で松下電気(現パナソニック)を起こしました。学歴もなければお金もなく、その上病弱だった松下幸之助さんの「ガチャ」はどのように説明できるでしょうか。

本題に戻りましょう。

入るお金と出るお金、それはどちらも同じ人が動かしている同じお金ですから、お金を管理する上で重要になってくるのは出ていくお金、つまりコストの管理こそが「キモ」になるのです。
入ってこなければどうしようもないじゃないか、という方がいるかもしれませんが、お金が入るかどうかはその人や会社の努力次第で決まりますから、管理というよりも「やるかやらないか」の選択の問題です。
その点コストというのは少なからず知識が必要で、知識が無いまま努力という言わば「経験」だけに頼ると必ず失敗します。

では、コストについて持っておくべき知識というのはどのようなものでしょうか。
知識といっても最低限必要なのはコストの「2つの側面」と「見え方」です。お金に2つの側面があったように、コストにも2つの側面があり、一つがプロフィットコスト、もう一つがロスコストです。

プロフィットとは利益のことですから、プロフィットコストとは「利益を生み出すための必要なコスト」ということです。一方ロスコストはその反対で「無駄なコスト」ということ。簡単に言えば物を仕入れて売りに出す時にかかる(出ていく)仕入れ代金はコストですが、売ることで結果的に利益を生み出すのでプロフィットコストです。その時にかかった運賃など関係するコストはすべてプロフィットコストになります。

では、それ以外のコストはすべてロスコストなのかというのは間違いです。例えば会社で社員旅行に行った時にかかった費用はロスコストになるかというと、それはその後の業績次第となります。つまり、業績が上がれば旅行が社員にとってのモチベーション向上につながったと考えられるということです。
ここでピンときた方もいるかもしれませんが、実はロスコストというのはお金の使い方次第で生じるものだと言えるのです。先ほど物を仕入れた時の費用はプロフィットコストと言いましたが、それが売れなかった場合は利益になりませんから、結果的にロスコストになってしまいます。
かけた費用が物理的な利益に限らず、利益をもたらす仕事のモチベーションのような精神的なものでも利益につながればそれはプロフィットコストであり、利益につながらなかったものを含めた無駄な費用がロスコストなのです。これがコストの知っておくべきもう一つの知識であるコストの「見え方」です。

見えるコストと見えないコストという言い方もしますが、仕事上では実際にお金のやり取りがある場合と、書類整理などの作業つまり労働に対する給料(人件費)など働いている時点においてお金のやり取りが無い場合があるということです。

お金のやり取りが見えていれば、それが無駄にならないようにすることはできますが、やり取りが見えていない場合は無駄になる可能性があり、そうなりがちです。これを避けるためには、徹底したコスト管理、つまり仕事上におけるあらゆる物事について実際どれだけの費用がかかっているのかを把握し、その費用を無駄にしないよう管理しなければなりません。
実はこの費用を無駄にしないこと、すなわち費用に対する効果を最大化しようするのがコストパフォーマンス(コスパ)です。世間一般では同じ物でも価格の安いものがコスパが良い、と言っていますが、本来はかけた費用を最大限活かす働きのことであり、いくら安い物であってもその人や会社にとって何の利益にもならないものは無駄でしかありません。

見えないコストに目を配り、かけた費用や働き・仕事をロスコストにしないようにすること、そして利益や成長の幅が最大化するような「コスパが良い」働き・仕事や商品・サービスを生み出すことが、お金に縛られずにお金を管理・コントロールする生き方だと言えるのです。

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