第1回「自立と自律」

2022年4月1日より成人年齢が20歳から18歳に変わり、 民法が変わってから初となる成人式が2023年1月に行われました。民法の規定や年齢による成人の捉え方はありますが、一般的に成人とは大人に成ったことを意味しており、「今から大人として扱うよ」ということです。

大人として扱うというのは、裏返せば「子供ではない」ということですが、その違いとして口にされるのが「自立した(大人)」と言う言葉。でも、大人になったら自立したことになるかと言えばそうではありません。

社会科で学んだ通り、憲法に国民に課せられた三大義務が掲げられており、「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」というものです。つまり、この三大義務を果たしてこそ自立したといえるわけです。だからこそ、社会人として仕事をし納税して初めて自立したと言えます。

では少し厳しい質問ですが、自立している人は「仕事ができている人」と言えるでしょうか?

仕事をして納税していれば自立していると言えますが、自立しているからと言って仕事が「できている」とは言い切れません。

働いて納税していること自体は国民の義務とは言え立派なことです。でも、支払っている税金の原資は働いた分のお給料ですが、そのお給料の原資は何であるかを考えてみましょう。

仕事をして得た「利益」がそれぞれのお給料の原資であり、それをそれぞれの働きに応じて分配されるのがお給料です。つまり、お給料とは働いたら貰えるものではなく、仕事として「利益が出て」初めて貰えるものだと言うことです。

「仕事ができている」かどうかの判断は、貰っているお給料以上の利益を出してこそ言えるものなのです。

自立の同音異義語に「自律」がありますが、自立が働いて納税している人のことを指しているのに対し、自律は読んで字の如く、ですが伝わりやすいので英訳にすると、「セルフコントロール」のことです。自己管理のことでもありますが、さらに突き詰めて言うと自ら「考えて」行動するということです。

先ほどのお給料の話でいくと、仕事の利益のことまで考えて働いているのが自律、仕事の利益のことまでは考えず指示されたことだけをやっている人は他律、ということです。

当然、指示されたことをやるのは間違いではありませんが、仕事の利益を考えずに指示されたことをやったからその分のお給料を貰うというのは、間違いと言うよりも非常に危険な行為です。なぜなら利益も出ていないのにお給料を貰い続けていたら、会社はいつか倒産してしまうからです。

これは極端な話ではなく、経営者自体がそのような放漫経営をしていたら会社は確実に倒産します。だからこそ仕事は「自律的な働き方」が求められるのです。

でも、人によっては自分の仕事で利益がどれだけ出ているのかわからないということもあります。例えば事務や経理といった内勤業務や作業が中心の現場仕事の場合、今日1日働いて果たして会社はどれだけの利益を上げているのかを知るのは難しいでしょう。

利益というのは仕事の代金(売上)から仕事にかかった費用(コスト)を差し引いて残ったものです。仕事にかかった費用というのは自分達のお給料(人件費)も含まれています。つまり利益がどれだけ出ているのかがわかりにくくても、自分達がこなす仕事が増える(量:効率)、あるいは難しい仕事ができる(質:効果)ことによってコストが下がり、相対的に利益は増えます。

利益が見えにくくても自分の仕事の仕方を変える、工夫することが利益に繋がっていきます。つまり自律的な働き方というのはできる・できないではなく、やるか・やらないかであり、企業だけでなく働く本人のためにも必要なことなのです。

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