これまで仕事をしていく上で重要な能力である「気づき」についてお話ししてきました。仕事において気づきが重要である理由、それは仕事の本質が「問題解決」であり、お客様の「困りごと」にいかに気づいて解決に向けて取り組みができるかが、それぞれの仕事の根幹だということでした。
この「気づき」というのは能力なので人によって差が出ます。一人一人の気づきの差はそれほど気にならないかもしれませんが、これを会社単位で考えると競合他社との「差別化」にまで影響を与えるものなのです。
では、企業は採用の段階で一人一人の気づきの能力を見極めて採用しているのでしょうか?
言いましたように一人一人の気づきの差は気にならない程度であり、ましてや必要なのは仕事における気づきであるので実際に働いてみないとその能力を知ることはできません。つまり、気づきの能力というのは企業に入社してから開発していくものであり、仕事をしていく中で鍛えられていくものだということです。
ですから、採用の段階で自分の気づきの能力について不安に思う必要はなく、むしろ入社後にそれぞれの気づきの能力を高める機会があるのかが問われるのは企業だということです。
では、気づきの能力はどのようにして高めることができるでしょうか。それぞれの仕事の仕方を覚えるのは当然ですが、これは例えて言えば学校での勉強と同じで知識を頭にインプットしているだけであり、単に仕事を「覚えた」だけでは気づきの能力は育ちません。
さらに、この段階で転職してしまうとほぼ確実に失敗します。なぜなら「仕事を覚える」ことと「仕事ができる」ということは全く別だからです。
繰り返しますが「覚える」とは知識のインプットであり、「できる」とは知識を元に応用したアウトプット、つまりその人の「仕事ぶり」でありそれに対する「評価」です。この「できる」と評価される上で必要なのが気づきの能力と、それを具体的な仕事とするための「提案」です。この提案が新しい仕事、新事業につながっていくからです。
このことから、気づきの能力を高め、積極的に仕事の提案ができるような人材を育てるのは企業の最重要課題と言って良いでしょう。ですから、就職活動をしている方はそれぞれの企業の「人材育成の機会」に注目すべきです。
例えば南洋グループの基幹事業である「館内配送」は今や全国の大型ショッピングモールで採用され稼働しているサービスですが、そこで働く人は仕事の仕方を教えてもらって毎日黙々と与えられた仕事をこなしているわけではありません。
各現場のリーダーは定期的に開催される「勉強会」で学び、それを各現場のスタッフに落とし込むことで顧客(大型商業施設)の満足のいくサービスを提供し続けています。
勉強会と聞くと会社から押し付けられるものだと考える方もいるかもしれませんが、言いましたように南洋グループの勉強会は「学ぶ」ことに主眼をおいたもので、知識のインプットと共にそれを基にしたそれぞれの取り組みを共有するというアウトプットをしています。
具体的には、「館内配送」というサービスの顧客満足度を高めるために「サービス品質チェック」を行い各現場の作業を評価していますが、単にチェック項目だけを与えられるのではありません。
チェック項目の基準について、顧客が求めているサービスの品質について理解をし、顧客に「喜ばれる」仕事の仕方を学ぶことで、品質を向上させるための行動や取り組みに気づいていくことができます。さらに、気づいたものを実際の仕事の中で実践をし、それを他のエリアの人たちに発表・共有することで全体の品質が上がっていきます。
一方的で「聞くだけ」の勉強会ではなく、参加者がアウトプットすることでそれぞれの理解やその上での行動が共有されることで「気づき」の能力が高まり、「仕事ぶり」につながる行動原理を同時に学んでいるのです。
これは全国でサービスを展開し、企業として統一された品質レベルを保ち続けようとする南洋グループならではの勉強会と人材育成の機会だと言えます。