現在のAIが人の顔を認識はできても表情から感情を読み取ることはできない、という話を最初にお伝えしました。
人間も顔の表情だけから感情を読み取っているのではなく、様子や言葉などの背景全体から読み取っており、AIはまだそこまでを処理することができないということです。
ただ、人間がさらに複雑なのが、感情を読み取れる一方で、その感情によって思い込みやこだわりといったものが脳の機能に影響を与えて「わざと」感情を読み取ることをしないことがあります。
これは「バイアス」と呼ばれる脳の省エネ機能なのですが、脳が繰り返し同じような環境下で同じような体験と感情を得ることで「これが正しい」という勝手な思い込み、決めつけを持ってしまうものです。
このバイアスの影響で、背景などから相手の感情を読み取らずに「あなたはこうだ」といった勝手な思い込みによる判断、決めつけをしてしまうのです。
つまり、人間はAIにできない感情を読み取るという優れた能力を自ら機能しないようにしているわけです。
ただし、人間はAIではありませんから、自分の中にあるそのバイアスに気づくことができます。自分の中にあるバイアスという「色眼鏡」に気づき、取り外すことで正しい判断、相手の感情に寄り添うことが可能です。
実はこの自分の中のバイアスや感情、コミュニケーションにおける反応の仕方などに気づくことは非常に重要で、コミュニケーションの幅が広がるだけでなく、仕事の仕方や生き方そのものが変わっていくこともあるのです。
特に、仕事の本質は問題解決であるとお伝えしましたが、問題の根本原因は「足りない」や「できない」など「ない」という否定的な考えや感情に囚われてしまうことにあります。
しかし、これも否定的感情による思い込みであり、そこに気づくことができれば問題解決の糸口を見つけることができるのです。
これは決して「できると思えばできるようになる」といった精神論のことではなく、考え方や物の見方を変えるということです。
バイアスや思い込みというのは物事のある一点だけを見て判断しようとするものであり、言わば「木を見て森を見ず」という状態になっています。
この状態にある自分に気づくために必要なことは、一旦自分の意見や考えを置いて、他の意見や考えを聞いてみたり、取り入れたりすることです。これは直接人から聞くだけでなく、本や新聞など様々な情報源から取り入れることも必要です。
そうすることで、徐々に問題の全体像が見えてくるようになり、本当に解決すべきこと、あるいは埋めるべきギャップの大きさがわかってきます。
こうなれば後はそれぞれをどのように変えていけば良いのかを考えるだけです。この時も一つの方法にこだわる必要はありません。あらゆる方法、手段を使って、というよりも試してみるというスタンスで取り組めば、思うような結果が出なくても次々に取り組んでいくことができます。
重要なのは「できる」「できない」で考えるのではなく、できる方法にはどんなものがあり、できない場合はその理由を考えるという連続した思考を持つことです。連続した思考を持てば何事においてもその意図と方法は無限大になります。
試行による一つ一つの結果は1か0のデジタルで、そのための思考は連続したアナログで進めるといずれ成功に辿り着くので、失敗することはありません。