第3回「コントロールできるもの(人・物・金・時間)」

『夢に日付を』というのは居酒屋和民をはじめとするワタミグループの創業者である渡邉美樹さんの著書ですが、名経営者と言われる人の多くは「夢」と「目標」を明確に使い分けています。こう言うとどうしても「成功するために何をすべきか」、ということを押し付けられるように感じる方もいるかもしれませんが、実はこれが「楽しく幸せに生きていくため」だとしたらどうでしょうか。

「楽しい」や「幸せ」の定義、基準は人それぞれ異なりますが、老若男女問わずすべての人に共通するのはそれが「主体的」であるということです。他人が楽しい、幸せだと感じることでも自分にとってはそうとは限らないというのは定義や基準が異なるから。でも、友人から勧められてやってみたら楽しかった、幸せを感じたということはよくある話です。

一方で、どんな高級食材でも嫌いなものを奢るからと言って無理に食べさせられたら不幸どころか、今ならハラスメントだと訴えるかもしれません。これも基準が異なることによるミスマッチが原因ですが、訴えられるかもしれないようなことをなぜやってしまうのかというと、本人にとってはそれが楽しいし、幸せを感じられるからです。つまり、楽しく幸せに生きていきたいのであればまず「主体的」に行動する、自らの意思で行動することが前提なのです。

ただし、先程の例のように自らの幸せのために他人に迷惑をかけることは許されません。実はここに「楽しく幸せに生きていくため」のもう一つの条件が隠されています。その条件とは「自律」です。

前回も自律とは「理性を働かせて考えて行動する」ことだとお伝えしましたから、他人に迷惑をかける前に自分を抑えるという意味かと考えられるかもしれません。それも確かにあります(この場合は自制)が、ここでお伝えしたいのは自律の反対である「他律」であることが幸せになれない原因だからだということです。

「自律」を自分の意思、「他律」を他人の意思と捉えるとよくわからないことになってしまうのですが、実はこの「自律」というのは自分の意思ということ以上に「理性」を働かせて自分をコントロールするという意味ですから、他律とは理性の反対にあたる「感性」によってコントロールされるということでもあるのです。簡単に言えば他律とは様々な「誘惑に負ける」あるいは「感情に振り回される」ということ。

先程の例も「自分が幸せなら良い」あるいは「自分が楽しいことは他人も楽しいはず」という考えが根底にあることで、無意識に他人へ価値観を押し付けてしまっているのです。つまり自律とは、自分自身を客観的に捉えて自分の感情をうまくコントロールすることだと言えます。

「楽しく幸せに生きていくため」の条件は「主体的」であると同時に「自律」していること、つまり自分を客観的に捉えて感情に振り回れることなく、自らの意思で活動していくことで「楽しく幸せに生きていける」ということです。

話を戻して、「夢に日付をつける」ことが「楽しく幸せに生きていくため」だと書きましたが、このように見ていくとこの言葉が「夢」と「日付」に分かれていることがわかります。他人の夢を持つことなどできませんから、夢とはすなわち自分の将来像を自ら描くということ、主体的に生きていこうとすることです。それに「日付をつける」ということは、それを実現させるために実行計画を立てようとすることです。

これは夢をゴールにしたロードマップを作るということですから、ゴールまでの道順はもちろん、たどり着くまでにクリアすべき課題の抽出、さらに予算も立てなければいけません。そう、「夢に日付をつける」とは人生設計のことであり、人生設計とはつまり自分の人生をマネジメントすることなのです。

マネジメントと聞くと経営者や管理責任者の仕事かと思うかもしれませんが、マネジメントとは立てられた計画がちゃんと進んでいくように管理することですから、誰でもやれることです。つまり誰もが自分の人生を豊かなものにするための経営者なのです。

企業経営の4大資源と言われるのが「ヒト、モノ、カネ、情報」であり、企業経営者はこれらの資源をいかに上手にマネジメント、管理しコントロールできるかが業績アップの鍵になります。では、人が自分の人生を豊かなものにしていくために管理しコントロールできる資源とは何でしょうか。それは自分自身と時間です。

他人のことは変えられませんが、自分自身は変えることはできます。先述の通り、自分をコントロールして自律的になることが夢や目標を達成させる基本です。自律的になれば自分の人生のすべての時間をコントロールすることができます。

計画を立てるというのは、限りある時間を有効に使おうというもので、自律的になる第一歩です。まずは将来設計、目標を決めて計画を立てるところから始めてみてください。

Scroll to Top